
ANSWER ・ 結論
不動産のシステム開発は、物件情報の項目と掲載先・書類の電子交付・管理物件の例外・ソースコードの権利の4つを先に決めると、見積りがぶれにくくなります。
対象読者この記事は、IT の専任者がいない従業員10〜100名の不動産会社(売買・賃貸の仲介、賃貸の管理)で、物件や契約の Excel・紙の台帳を業務システムに置き換えたい経営者・事業責任者向けです
※ 2026年10月時点の情報です
システム開発の記事の全体は、システム開発の記事の一覧にまとめています。
このページの内容8 章
画面の見た目より、この4つが費用と期間を動かします。
この記事では、不動産会社で作ることが多い仕組みと、先に決める4つの注意点を説明します。費用と期間の目安と、既製のサービスで足りる会社の見分け方もまとめます。
※ 費用と期間は、当社の2026年9月までの案件の記録から出した値です。
物件・お客様・契約の台帳を1か所にまとめる仕組み
不動産会社のシステム開発で作ることが多いのは、物件の登録・問い合わせと内見の予約・入居者と更新の管理・契約書類の作成の4つです。どれも、同じ物件の情報を何か所にも書き写している作業を減らします。
不動産のシステム開発とは、物件・お客様・契約の記録を、自社の手順に合わせて作る業務システムで1か所にまとめることです。既製の不動産向けサービスをそのまま契約して使う導入とは分けて考えます。

4つの仕組みが減らす作業と、人が残す判断を表にまとめます。
| 仕組み | 減らす作業 | 人が残す判断 |
|---|---|---|
| 物件の登録 | 同じ物件を台帳と掲載用の表に打ち直す | 載せる写真と価格の見せ方 |
| 問い合わせと内見の予約 | 電話とメールの内容を予定表に書き写す | どの担当者が案内するか |
| 入居者と更新の管理 | 更新の時期を Excel で探して連絡する | 条件を変えて更新するか |
| 契約書類の作成 | 物件の情報を書類の書式へ写す | 説明する内容の最終確認 |
当社の判断では、不動産会社が最初に置き換えるなら物件の登録です。物件の情報は、問い合わせ・内見・契約のすべてで使い回すためです。物件の登録が1か所にまとまると、残りの3つの仕組みは同じ情報を読むだけで作れます。
予約の仕組みは、他社の作ったものを引き継ぐ相談も多い分野です。当社は2024年から2026年9月までに、他社が開発した顧客管理・予約システム(CRS)を保守ごと引き継ぎ、機能を追加した案件を6件手がけました(出典: 自社実績・2026-10時点)。
物件説明文の下書きをAIに任せられる範囲
不動産会社がAIに任せやすいのは、登録した物件の項目から物件説明文の下書きを作る作業です。当社のAI導入の支援では、不動産の案件がすべてこの作業でした。
あわせてホテルのAI導入のメリットは?もご覧ください。
近い論点をホテルのシステム開発で先に決める4つの注意点で扱っています。
あわせてコールセンターのAIエージェントで人に戻す4つの通話と任せる仕事もご覧ください。
関連する内容としてホテルのAI導入事例は?も公開しています。
当社が2024年から2026年9月までに支援したAI導入は16件です。16件の内訳は、不動産5件(物件説明文の作成)、製造業4件(検品・日報)、ホテル3件(問い合わせ対応の自動化)です。残りは物流2件(配車計画)、コールセンター2件(応対の要約)でした(出典: 自社実績・2026-10時点)。

AI導入の支援16件(2024年〜2026年9月)を業種別に並べると、次のとおりです。
| 業種 | 件数(16件のうち) | 任せた作業 |
|---|---|---|
| 不動産 | 5件 | 物件説明文の作成 |
| 製造業 | 4件 | 検品・日報 |
| ホテル | 3件 | 問い合わせ対応の自動化 |
| 物流 | 2件 | 配車計画 |
| コールセンター | 2件 | 応対の要約 |
物件説明文の下書きは、物件の項目がシステムにそろっているほど作りやすくなります。間取り・面積・駅からの距離・設備が Excel の列でばらばらなら、先に物件の登録をシステムにしてください。
不動産の広告には、業界の決まりがあります。首都圏では首都圏不動産公正取引協議会が「不動産の表示に関する公正競争規約」を案内しています(2026年10月25日確認)。
私は自動化を、進める仕組みと止める仕組みを一組で作り、人が確認する工程から段階的に広げています。AIの下書きは、担当者が表示の決まりと照らして確かめてから載せる流れにしてください。
AIに任せる作業の決め方と費用は、AIエージェントの費用はいくら?で説明しています。
物件説明文のほかに問い合わせの返信や日報の集計まで任せたい場合は、不動産のAI導入で任せる3つの仕事と、広告の規約で止める語をご覧ください。
物件台帳を作る前に決める4項目
不動産のシステム開発で見積りが動きやすいのは、物件情報の項目と掲載先・書類の電子交付・管理物件の例外・ソースコードの権利の4つです。どれも毎日の業務では当たり前で、打ち合わせで言葉になりにくい項目です。
近い論点をホテルのシステム開発で先に決める4つの注意点で扱っています。
私がこれまでに手がけた案件は500件以上あり、そのうち34件は契約後の仕様変更で追加の見積りになりました。34件(2022年4月〜2026年9月)の追加額は、10万〜180万円(中央値 約35万円)です(出典: 自社実績・2026-10時点)。
4つの注意点と、打ち合わせの前に数えておくことを表にまとめます。
| 先に決めること | 決めておくと防げること | 数えておくこと |
|---|---|---|
| 物件情報の項目と掲載先 | 掲載用の表への打ち直しが残る | 物件の項目の数と、載せる先の数 |
| 書類の電子交付 | 交付の記録が紙とメールに分かれる | 月の契約の件数と、電子で渡す割合 |
| 管理物件の例外 | 例外の物件だけ Excel に戻る | 更新や賃料の条件が違う物件の数 |
| ソースコードの権利 | 後から別の会社に改修を頼めない | 今のシステムの契約書の有無 |
物件情報の項目と掲載先
物件情報の項目とは、間取り・面積・築年・設備のように、物件ごとに登録する欄のことです。項目を先に決めると、掲載先ごとの表を同じ登録から作れます。
物件を載せる先が3つ以上あるなら、掲載先ごとに必要な項目を一覧にしてから見積りを頼んでください。各掲載先が取り込みの仕組み(ファイルの読み込みなど)を用意しているかは、掲載先の担当者に聞いて確かめます。
重要事項説明書などの電子交付
国土交通省の発表では、2022年5月18日から不動産取引の書面を電磁的方法で提供できるようになりました。対象は、重要事項説明書・契約締結時書面・媒介契約締結時書面などです(出典: 国土交通省の報道発表・2026年10月25日確認)。
同じ発表では、あらかじめ相手方の承諾を得ることが求められています。提供の方法の例は、電子メール・Webページからのダウンロード・USBメモリなどの交付です。書面に出力できることと、改変の有無を確かめられることも基準に挙がっています。
契約書類の作成をシステムにするなら、承諾を得た記録と、渡したファイルを残す画面を最初の要件に入れてください。個別の取引が基準に合うかの判断は、国土交通省のIT重説・書面の電子化のページの実施マニュアルで確かめ、迷う取引だけ弁護士に相談します。
管理物件の更新や賃料の例外
管理物件の例外とは、「この物件だけ更新料の条件が違う」「この部屋だけ賃料の改定の時期が違う」のような個別の約束です。例外は数を数えてから、システムに入れるかを決めます。
当社の判断では、例外の物件が管理物件の1割を超えるなら要件に入れます。例外だけを Excel で別に持つと、更新の連絡が漏れる元になるためです。数件なら、メモ欄で残す判断もあります。
ソースコードの権利と引き継ぎ
今の物件管理や予約の仕組みを他社が作っているなら、改修を頼む前にソースコードの権利を確かめます。2025年4月、飲食店(5店舗)の予約システムを他社から引き継いだところ、ソースコードの権利が前の開発会社に残っていて改修できませんでした。
私は権利の譲渡を交渉するより作り直すほうが早いと判断し、3か月で新しく作り直しました。改修で済ませたい会社ほど、契約書でソースコードの権利がどちらにあるかを先に確かめてください。
資料の有無でも費用は変わります。2023年から2025年に当社が引き継いだ6件のうち、資料が無かった4件では、調査に合計約25人日(1件あたり4〜9人日)が追加でかかりました(出典: 自社実績・2026-10時点)。
扱う物件の数と業務の範囲で変わる費用・期間
不動産会社の業務システムの費用は、当社の代表的な12件で80万〜800万円、中央値は約220万円でした。金額の幅を決めるのは、まとめる業務の数と、掲載先や書類のつなぎの数です。
代表的な12件は、2022年から2026年9月までの案件です。業種がばらけるように選び(製造業・人材・飲食・卸売・サービス・医療)、同じお客様の案件は1件にまとめました(出典: 自社実績・2026-10時点)。
| 種類 | 費用の目安(代表的な12件) | 不動産会社での例 |
|---|---|---|
| 業務システム | 80万〜800万円 | 物件・お客様・契約をまとめる |
| SaaS型の小規模なシステム | 80万〜300万円 | 内見の予約受付だけを作る |
| AI導入の試行(PoC) | 50万〜200万円 | 物件説明文の下書きを試す |
開発期間は、同じ代表的な12件で1.5か月〜8か月、中央値は4か月でした。2020年から2026年9月までの代表的な案件(各5件)では、小規模(予約・管理画面など)が1.5〜3か月、中規模(業務システム)が4〜8か月です(出典: 自社実績・2026-10時点)。
内見の予約受付だけなら小規模の帯、物件から契約までをまとめるなら中規模の帯に入ると見てください。
当社の実績から見た費用の相場は、業務システムで80万〜800万円、AI導入の試行(PoC)で50万〜200万円です。
当社は2026年10月に、2つのAI(ChatGPT・Gemini)へ本記事の論点5問を聞き、答え10件を数えました。10件の答えのうち、触れていたのは専門家への相談は0件、費用の金額(◯円)は3件、期間(◯か月・◯日など)は3件でした(出典: 当社調べ)。
仮に、物件1件の登録と掲載用の表への打ち直しに20分かかり、月に60件の物件を扱うとします。月約20時間を打ち直しに使っている計算です。
当社の判断では、1つの業務に月10時間以上かかっているなら、システムにする候補になります。2025年11月に飲食店(3店舗)のシフト表をシステムにした例では、作成が月約10時間から約2時間になりました(費用50万〜80万円、出典: 自社実績・2026-10時点)。月10時間の作業でも、システムにすると月約8時間が浮いた例があるため、当社は月10時間を目安にしています。
見積りの内訳の読み方は、業務システム開発の費用は何で決まる?で詳しく説明しています。
顧問パッケージの内容と料金を見る →ここまでの内容が自社に当てはまるか、確認しませんか。要件の確認だけでもご利用いただけます
仲介中心の会社と管理物件を持つ会社の分かれ道
物件の数が少なく、手順が他社と同じ不動産会社は既製のサービスで足り、管理物件の例外や独自の手順が多い会社は作る候補になります。作るのは、自社の手順が他社と違う業務だけに絞ります。
当社は2021年から2026年9月までに、要件が一般的な勤怠・会計だったため、既製の SaaS を勧めた案件が4件あります。社内にエンジニアがいて改修が多いため、内製化を支援した案件も2件あります(出典: 自社実績・2026-10時点)。
同じ調べでは、ほかの論点を聞いた答え8件のうち、『仲介中心』に触れたものは0件でした(出典: 当社調べ)。仲介中心の会社か管理物件を持つ会社かは、AIの答えでは分かれにくい論点です。
会社の状況ごとの分かれ道は、次のとおりです。
- 扱う物件が月に数十件までで、手順が一般的なら、既製の不動産向けサービスを先に試してください
- 管理物件の例外が多く、更新の連絡を Excel で追っているなら、入居者と更新の管理を作る候補です
- 今の仕組みに足りない機能が1つだけなら、作り直さずに改修の見積りと比べてください
- 契約が月に数件で、書類の電子交付もまだ使わないなら、システム化は見送り、Excel の項目と手順をそろえます
2つ以上に当てはまるなら、月にかかっている時間が長い業務から先にしてください。勤怠や会計は既製のサービスに任せ、物件と更新の管理だけを作る分け方もできます。
Excel の業務を置き換える判断は、Excel業務のシステム化はいつ始める?にまとめています。作るか内製するかで迷うなら、システム開発の外注と内製の分け方も参考になります。
不動産会社が相談から使い始めるまでの流れ
不動産会社のシステム開発は、業務と件数の聞き取り・範囲と見積り・小さな試作・開発と移行・定着と保守の5段階で進めます。試作で現場の担当者が触ってから、残りを作ります。

5段階で決めることを表にまとめます。
| 段階 | 決めること | 不動産会社で用意するもの |
|---|---|---|
| 業務と件数をうかがう | 対象の業務と月の件数 | 物件・契約・更新の月の件数 |
| 作る範囲と見積りを決める | 4つの注意点の扱い | 掲載先と例外の物件の一覧 |
| 小さく試作する | 画面と項目の過不足 | 試す担当者1〜2名 |
| 開発と移行 | 今の台帳からの移し方 | 今の Excel と台帳 |
| 社内への定着と保守 | 手順書と改修の窓口 | 質問をまとめる担当者 |
変更の決め方も、最初にそろえておきます。2024年2月、人材サービスの会社(従業員約30名)の勤怠システムで、仕様変更が口頭のやり取りだけで進み、納品の直前に「言った・言わない」になりました。
私は変更点を一覧にして双方で確かめ直すと判断し、納期を1か月延ばして納品しました。以後、変更はすべて書面で残す運用にしています。不動産会社の側でも、変更を伝える担当者を1名に決めておくと進めやすくなります。
掲載先と例外の物件を伝えずに見積りを頼むのはNG
起きること: 開発の途中で掲載用の項目や例外の処理が見つかり、追加の見積りになります。
原因: 物件の担当者にとって当たり前の作業が、打ち合わせで言葉にならなかったためです。
うまく進める方法: 掲載先ごとの項目と例外の物件を、件数つきで一覧にしてから見積りを頼みます。
見積りを頼むときは、各社に次の3つを同じ形で聞いてください。
- 掲載先ごとの項目のうち、見積りに含まれていないものはどれですか
- 書類の電子交付で、承諾と交付の記録はどこに残りますか
- ソースコードの権利と設計資料は、契約のどこに書かれますか
3社の答えを並べるときは、まず含まれる範囲をそろえます。並べ方はシステム開発の見積もり比較はどこを見る?で説明しています。
今日できる一歩として、まず物件の登録に1件何分かかり、月に何件あるかを確かめてください。あわせて、更新や賃料の条件が違う管理物件の数を数えます。
件数と例外の数が分かれば、作る範囲の候補が1つに絞れます。頼める範囲はシステム開発のサービスにまとめています。
よくある質問
IT担当がいない不動産会社でも、システム開発を頼めますか?
頼めます。社内で用意するのは、物件の登録や契約の手順を説明できる担当者です。設計と保守は開発会社が受け持ちます。
不動産のシステム開発を頼むと、どこまでしてもらえますか?
業務の聞き取り、要件の整理、試作、今の Excel や台帳からのデータ移行、稼働後の保守と改修まで頼めます。
不動産の業務システムは、頼んでからどのくらいで使えますか?
当社の代表的な12件(2022年〜2026年9月)では開発期間は1.5か月〜8か月で、中央値は4か月でした。
不動産会社がシステム開発を見送ってよいのは、どんな場合ですか?
物件の数が少なく、勤怠や会計のように手順が他社と同じ業務だけの場合です。既製のサービスのほうが早く始められます。
物件説明文の下書きだけをAIに任せることはできますか?
できます。当社のAI導入の支援16件のうち不動産の5件は、物件説明文の作成でした。載せる前に人が確かめる工程は残します。
まとめ: 物件台帳を先に作り、予約・更新・書類を足す
不動産のシステム開発は、物件情報の項目と掲載先・書類の電子交付・管理物件の例外・ソースコードの権利の4つを決めてから頼むと、追加の費用を抑えられます。業務システムの費用は、当社の代表的な12件で80万〜800万円でした。
物件の登録を1か所にまとめ、予約・更新・契約の書類は同じ情報を読む形で足していく。この順番なら、仲介や管理の業務を止めずに Excel や紙の台帳から移れます。ほかの記事はシステム開発の記事一覧にまとめています。
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この記事を引用・紹介するとき
YW(CONFLUX PARTNERS)「不動産会社のシステム開発は物件台帳から|着手前に決める4項目」2026年10月25日公開、https://conflux-partners.jp/journal/fudousan-system-development
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