
ANSWER ・ 結論
システム開発の見積もりは、合計の金額で比べず、各社の前提をそろえてから工程ごとに並べて比べます。
対象読者この記事は、IT の専任者がいない従業員10〜100名の会社で、システム開発の外注先を比べている経営者・事業責任者向けです
※ 2026年10月時点の情報です
システム開発の記事の全体は、システム開発の記事の一覧にまとめています。
このページの内容9 章
同じ業務でも、作る範囲や保守の範囲の読み方が会社ごとに違うため、合計だけでは安い理由も高い理由も分かりません。この記事では、相見積もりを頼む前に渡す資料と、見積書を横に並べるときの見方を説明します。
※ 税務の扱いは国税庁の2026年4月1日現在の法令等にもとづきます。
システム開発の見積もりを比較する前にそろえる前提
見積りを正しく比べるには、各社に同じ資料を渡し、同じ前提で金額を出してもらうことが先です。前提がばらばらなら、並べた金額の差は会社の差ではなく前提の差になります。
相見積もりとは、同じ依頼内容を複数の会社に伝え、見積りと提案を出してもらって比べることです。比べる目的はいちばん安い会社を探すことではなく、作る範囲と費用の妥当な幅を知ることにあります。
私は2022年から2025年まで、AI・システム開発会社2社の代表取締役として見積りを出す側にいました。依頼の文面が短いほど、こちらは分からない部分を想像で埋めるしかありません。
想像で埋めた部分は、会社ごとに違う形で金額に乗ります。ある会社は余裕を多めに積み、別の会社は範囲を狭く読んで安く出します。依頼する側が前提を書いて渡すだけで、比べられる見積りに変わります。
費用がどう決まるかの基本は、業務システム開発の費用は何で決まるかで人月の考え方から説明しています。
相見積もりは何社に頼めばよいか
相見積もりは、話を聞く会社を広く集め、見積りを頼む段階で2〜3社に絞ると比べやすくなります。社数が多いほど、資料のやり取りと面談の時間が増え、社内の担当者の手が回らなくなります。

依頼先を絞る流れは、次の5つの段階です。
- 候補の会社を集める: 似た業種や似た規模の開発実績がある会社を探します
- 提案依頼書を送る: 全社に同じ文書を送ります
- 見積りと提案を受け取る: 金額と一緒に、進め方の提案を出してもらいます
- 面談で前提を確かめる: 金額の根拠と含まれない作業を聞きます
- 1社に決める: 金額と進め方、保守の体制を合わせて決めます
2〜3社という数は、表に並べて見比べられる上限としての目安です。決まった正解の数ではありません。比べる軸がそろっていれば、2社でも十分に判断できます。
提案依頼書には何を書けばよいか
提案依頼書には、業務の手順・困っている点・作る範囲・予算と時期・件数の5つを書きます。IT の言葉で書く必要はありません。普段の業務の言葉で書いたほうが、開発会社は正しく読み取れます。
提案依頼書(RFP)とは、開発会社に見積りと提案を頼むために、依頼する側が作る文書です。何に困っていて、何を作ってほしいかを、全社に同じ内容で伝える役目があります。
| 書くこと | 書き方の例 | 書いておくと何が変わるか |
|---|---|---|
| 今の業務の手順 | 誰が、何を見て、どこに入力しているか | 作る量を各社が同じように読める |
| 困っている点 | 転記に時間がかかる、入力ミスが出る | 目的に合う提案が返ってくる |
| 作る範囲と作らないもの | 受注の入力は作る、会計への連携は今回は作らない | 範囲の読み違いによる金額の差が減る |
| 予算と時期 | 使い始めたい月、出せる予算の幅 | 予算に合わせた段階の提案が出る |
| 1か月の件数と時間 | 月に何件、何時間かかっているか | 浮く時間と費用を比べられる |
予算を書くと足元を見られるのでは、と心配される方もいます。見積りを出す側から見ると、予算が分からない依頼は、作る範囲の大きさを決められません。予算の幅を書いたほうが、その中で何ができるかの提案が返ってきます。
今使っている Excel や紙の帳票の見本も添えてください。個人情報は伏せたもので足ります。
見積書を横に並べて比べる項目
見積書は、工程ごとの人数と期間、含まれない作業、毎月の費用、保守の範囲、権利の扱いの5項目を1つの表に書き写して比べます。各社の見積書は書式が違うため、そのままでは並びません。
| 比べる項目 | 見るところ | 各社に聞くこと |
|---|---|---|
| 工程ごとの人数と期間 | 要件定義・設計・開発・テスト・導入の内訳 | 人月が最も多い工程はどこか |
| 含まれない作業 | 「別途」「対象外」と書かれたもの | 今回の金額に入っていない作業は何か |
| 毎月の費用 | サーバー・外部サービスの利用料 | 使う人や件数が増えると、いくら変わるか |
| 保守の範囲 | 不具合の対応、問い合わせ、部品の更新 | 保守に含まれない改修はどう頼むのか |
| 権利と資料 | ソースコードと設計書の引き渡し | 別の会社に改修を頼めるか |
表の5項目のうち、合計の金額に直接は出てこないのが「含まれない作業」と「権利と資料」です。合計が安い見積りが、データの移し替えや操作説明を別料金にしている場合があります。
並べた表で空欄になった項目は、その会社に質問して埋めます。空欄のまま比べると、書いていない会社のほうが安く見えます。
見積書によく出る言葉の読み方
見積書には、合計を読むだけでは中身が分からない言葉が出てきます。よく出る言葉と、確かめ方を表にまとめます。
| 見積書の言葉 | 意味 | 確かめること |
|---|---|---|
| 一式 | 作業をまとめて1行にした書き方 | 中に入っている作業の一覧をもらう |
| 別途 | 今回の金額に入っていない作業 | 頼むといくらになるかの目安を聞く |
| 想定工数 | 見積りの前提にした作業の量 | 前提が変わったときの扱いを聞く |
| 保守費 | 使い始めた後の毎月の費用 | 含まれる対応と回数の上限を聞く |
「一式」の行が多い見積書は、悪い見積書というわけではありません。小さな作業をまとめて書いている場合もあります。中身の一覧をもらえれば、他社の見積書と同じ粒度で並べ直せます。
「別途」の行は、表の「含まれない作業」の欄に書き写してください。各社の別途の行を並べると、どの会社がどこまでを金額に入れているかが一目で分かります。
工程ごとに答えが返ってくるかを見る
面談では「作る範囲を半分にしたら、どの工程の金額が減るか」を聞いてください。工程ごとの積み上げで見積っている会社なら、どの工程がどう減るかを答えられます。
答えが合計の値引きだけで返ってくる場合は、根拠の内訳をもう一度聞いてください。内訳が分かる会社とは、予算に合わせて範囲を調整する相談ができます。
顧問パッケージの内容と料金を見る →ここまでの内容が自社に当てはまるか、確認しませんか。要件の確認だけでもご利用いただけます
見積もりの金額に差が出る理由
同じ依頼でも金額に差が出るのは、作る範囲の読み方と、導入・保守・改修をどこまで含めるかが会社ごとに違うからです。会社の単価の差だけで金額が分かれることは少なく、前提の差が大きく効きます。

見積りの金額は、次の4つに分けると比べやすくなります。
- 最初の費用: 要件定義から設計・開発・テストまでの費用です
- 導入の費用: データの移し替え、操作説明、手順書づくりの費用です
- 毎月の費用: サーバーや外部サービスの利用料と、保守の費用です
- 後からの費用: 業務が変わったときの改修や、機能を足す費用です
安い見積りと高い見積りを4つに分けると、差の出どころが分かります。最初の費用だけが安く、導入と保守が含まれていない見積りは、使い続ける段階で費用が増えます。
5年の総額で比べる
国税庁のソフトウエアの取得価額と耐用年数では、販売用の原本と研究開発用を除くソフトウエアの耐用年数は5年です(2026年4月1日現在の法令等)。最初の費用に、5年分の毎月の費用と見込みの改修費を足した総額で並べると、比べる軸がそろいます。個別の会計処理は顧問の税理士に確認してください。
自社で使えるか、相談する →お手元の見積書を拝見し、工程の抜けや含まれていない作業がないかを一緒に確かめます。何を頼むか決まっていなくても大丈夫です。
金額のほかに比べておくとよいこと
金額と同じくらい、試作で小さく始められるか、保守の体制、ソースコードと資料の引き渡しの3つを比べておくと、作った後も使い続けられます。システムは使い始めてからの期間のほうが長いためです。
合計の金額だけで1社に決めるのはNG
最初の金額が安くても、改修のたびに別料金になる、保守の範囲が狭い、といった条件で5年の総額が逆転することがあります。先に「含まれない作業」と「保守の範囲」を表で埋めてから決めてください。
比べておくとよい点を、順に説明します。
1つ目は、小さく試してから広げられるかです。最初から全部を作る提案より、1つの業務だけを試作して確かめる段階を置く提案のほうが、作り直しの費用がかかりにくくなります。
私たちが開発した「AIO(SEO)対策エージェント」は、記事づくりの7工程を毎日自動で進める仕組みです。提供はセブンセンシズ株式会社が行っています。作るときは、進める仕組みと止める仕組みを一組で作ることを決めていました。人が確かめる工程を残して始め、確かめられた部分から自動に広げる進め方です。
2つ目は、保守の体制です。担当者が1人だけの場合、その人が休むと対応が止まります。誰が、どの時間帯に、どこまで対応するかを聞いてください。
3つ目は、ソースコードと設計書の引き渡しです。私は開発会社の側として、契約に書いていないことは作った側に残る前提で契約書を読んでいました。引き渡しを契約に書いておくと、将来ほかの会社にも改修を頼めます。
契約の条項を考えるときは、情報処理推進機構(IPA)が2020年12月22日に公開した情報システム・モデル取引・契約書(第二版)が参考になります。個別の契約の判断は弁護士に確認してください。
自社に合う依頼先の決め方
依頼先は、業務が独自かどうかと、作った後に誰が面倒を見るかで選ぶと決めやすくなります。開発会社だけが選択肢ではありません。

| 観点 | 開発会社 | 個人の開発者 | 既製サービス |
|---|---|---|---|
| 業務に合わせて作る | ○ | ○ | △ |
| 担当者が休んでも続く | ○ | △ | ○ |
| 最初の費用の小ささ | △ | ○ | ○ |
| 保守と改修の相談 | ○ | △ | △ |
判断の分かれ目は、次のように考えると決めやすくなります。
- 既製サービスで業務のほとんどが回るなら、既製サービスを選び、足りない部分だけを開発で補います
- 独自の手順が自社の強みで、長く使い続けるなら、保守まで頼める開発会社に見積りを頼みます
- 何を作るかがまだ決まらないなら、見積りの前に業務の棚卸しから始めます
すぐに相見積もりに進まず、待ったほうがよい場合もあります。社内で決める人が決まっていないときは、各社への回答が遅れ、比べる前に時間だけが過ぎます。先に担当者を1人決めてください。
AI を業務に組み込む開発なら、AIエージェントの費用の考え方もあわせて比べてください。作ったものを自社のサービスとして外へ売るなら、SaaS 開発の費用で別の見方を紹介しています。
今日できる一歩
今日できる一歩は、見積りを頼みたい業務を1つ選び、手順を10行で書き出すことです。その10行が、提案依頼書のいちばん大事な部分になります。
CONFLUX PARTNERS のシステム開発では、要件定義から保守まで、社内で使われ続ける形を一緒に整えます。
自社で使えるか、相談する →いまの業務の流れと、受け取った見積りの内容をうかがい、比べ方と進め方の目安をお伝えします。ご契約を前提としたご案内ではありません。
よくある質問
相見積もりを頼むと、開発会社に失礼になりませんか?
なりません。比べていることを最初に伝え、同じ資料を渡せば、各社とも前提をそろえて見積りを出せます。
作りたいものが固まっていなくても、見積りを頼めますか?
頼めます。困っている業務と件数が分かれば概算は出ます。確定の金額は作る範囲が決まった後になります。
IT に詳しい社員がいなくても、見積書を比べられますか?
比べられます。工程ごとの人数と期間、含まれない作業、毎月の費用の3点を同じ表に並べれば足ります。
見積りの比較から開発の開始まで、どのくらいかかりますか?
資料の準備と各社の回答、面談の日数で決まります。社内で決める人を先に決めておくと早く進みます。
相見積もりをしないほうがよいのは、どんな場合ですか?
今のシステムを作った会社にしか分からない改修です。まず資料と権利の引き渡しを確かめてください。
まとめ: 見積もりは前提をそろえてから並べる
システム開発の見積もりは、合計の金額で比べると、前提の差を会社の差と取り違えます。提案依頼書で前提をそろえ、工程ごとの内訳・含まれない作業・毎月の費用・保守・権利を1つの表に並べてください。
同じ資料を渡し、5項目の表を埋め、5年の総額で比べる。この順番で進めると、安さだけで選ばずに、使い続けられる依頼先を選べます。ほかの記事はシステム開発の記事一覧にまとめています。
この記事を引用・紹介するとき
YW(CONFLUX PARTNERS)「システム開発の見積もり比較はどこを見る?相見積もりの並べ方」2026年10月12日公開、https://conflux-partners.jp/journal/system-development-estimate-comparison
CONSULT
システム開発のテーマを、自社で進めるときは
業務システムや Web アプリを、事業の資産として評価される設計で開発します。
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