
ANSWER ・ 結論
システム開発を外注しても、著作権は契約で決めない限り開発会社に残ります。発注側が自由に直して使い続けるには、契約書で権利の持ち主を決め、著作権法27条・28条の権利まで書き込む必要があります。
対象読者業務システムや Web アプリの開発を外注しようとしている、または契約書を確認している経営者・担当者
※ 2026年10月時点の法令と公的資料にもとづく情報です。個別の契約の判断は、弁護士にご相談ください。
この記事でわかること
- 外注したシステムの著作権が、だれのものになるか
- 「著作権を譲渡する」だけでは足りない理由(著作権法61条2項)
- 権利の決め方の3つの型と、それぞれ向いている場面
- 契約で外せない5つの項目のチェックリスト
- AI で書いたコードの権利の考え方
システム開発の記事の全体は、システム開発の記事の一覧にまとめています。
このページの内容9 章
外注したシステムの著作権は、だれのものになるか
外注したシステムの著作権は、契約で決めない限り、プログラムを書いた開発会社のものです。
著作権は、作品を作った人に自動で生まれる権利です。システム開発では、プログラムを書いた会社が「作った側」になります。開発会社の社員が仕事として書いたプログラムは、原則としてその会社が著作者になります。
発注側が開発費を全額払っていても、それだけで著作権は移りません。お金を払うことと、権利を譲り受けることは、別の話として扱われます。
私は2022年から AI・システム開発の会社を経営し、開発会社として契約書を交わす側に立ってきました。開発会社の側から見ると、権利の条項は「書いていないことは、作った側に残る」という前提で読むものです。
ことばの整理
著作権:作品を複製・改変・公開などする権利。譲り渡せる。
著作者人格権:作った人の名誉や意思を守る権利(勝手に変えられない権利など)。譲り渡せない。
「著作権を譲渡する」と書くだけでは足りない理由
「著作権を譲渡する」とだけ書いた契約では、システムを改変する権利が開発会社に残ると推定されます。
著作権法の第61条第2項は、譲渡の契約で第27条・第28条の権利が「譲渡の目的として特掲されていないときは」、これらの権利は譲渡した者に留保されたものと推定する、と定めています。
第27条は、翻案(作り変え)する権利です。第28条は、作り変えたもの(二次的著作物)を利用する権利です。システムでいえば、機能の追加や改修がこれにあたります。
つまり、改修して使い続けたいなら、契約書には「著作権(著作権法第27条及び第28条に規定する権利を含む)を譲渡する」と書く必要があります。たった一言の違いで、あとから改修の自由が失われることがあります。
権利の決め方は3つの型から選ぶ
著作権の決め方は、「発注側に移す」「開発会社に残して使わせてもらう」「部分ごとに分ける」の3つの型から選びます。
IPA のモデル契約書(第二版)でも、権利の帰属は1つに決め打ちせず、ベンダー(開発会社)に帰属させる案、汎用的なプログラムはベンダーに・それ以外は発注側に帰属させる案などの選択肢を示しています。第二版は2020年12月22日に公表されました。
| 型 | 中身 | 向いている場面 | 気をつけること |
|---|---|---|---|
| 発注側に移す | 成果物の著作権を、27条・28条を含めて発注側へ譲渡する | 自社の事業の中核になるシステム。将来、別の会社にも改修を頼みたい | 費用が上がりやすい。開発会社の汎用部品まで譲渡の対象にすると交渉が難しくなる |
| 開発会社に残す(利用許諾) | 著作権は開発会社に残し、発注側に使う権利を認める | 汎用的な仕組みを使う開発。費用を抑えたい | 許諾の範囲(改修・他社への依頼・転用)を具体的に書かないと、あとで動けない |
| 部分ごとに分ける | 汎用部品は開発会社、その案件のために作った部分は発注側(または共有) | 開発会社の既存の部品を使いつつ、独自部分は自社で持ちたい | どこが「汎用」かの線引きを、納品物の一覧で決めておく |
どの型を選ぶかは、そのシステムを自社の事業の資産として持ち続けたいかで決まります。中核のシステムなら「発注側に移す」か「部分ごとに分ける」を選んでください。
契約で外せない5つの項目
契約書では、①権利の帰属、②著作者人格権、③ソースコードと設計書、④部品と再委託、⑤保守とデータの5つを必ず確かめてください。
契約前のチェックリスト
- 権利の帰属:だれに帰属させるか。発注側に移すなら「著作権法第27条及び第28条に規定する権利を含む」と書いてあるか。
- 著作者人格権:譲り渡せない権利なので、「開発会社は著作者人格権を行使しない」という特約があるか。
- ソースコードと設計書:納品物にソースコード・設計書・設定の手順が含まれているか。動く画面だけでは、ほかの会社が改修できない。
- 部品と再委託:開発会社の汎用部品や、無料で公開されているプログラム(オープンソース)の利用条件はどうか。下請けの会社が書いた部分の権利も、開発会社がまとめて確保しているか。
- 保守とデータ:保守をほかの会社に替えられるか。システムに入れた自社のデータを、いつでも取り出せるか。
5つのうち、あとから最も直しにくいのは③と④です。契約を交わしたあとに「ソースコードは渡せない」「その部分は下請けの権利だ」と言われると、交渉の余地がほとんどありません。
システム開発の進め方と、権利の決め方を相談する →要件の整理から、契約で決めておくことまで一緒に確認します。
よくある失敗例
権利の失敗は、契約の時点では気づかず、改修や会社の状況が変わったときに表に出ます。
発注側に多い失敗
- 「著作権を譲渡する」とだけ書き、27条・28条を入れていなかった。別の会社に改修を頼もうとして、改変の権利が問題になった。
- 納品物が動くシステムだけで、ソースコードがなかった。開発会社が事業をやめたあと、だれも直せなくなった。
- 下請けの会社が書いた部分の権利が、開発会社に移っていなかった。発注側が譲り受けたつもりの権利に、穴があいていた。
- 無料で公開されているプログラムの利用条件を確かめず、製品として外販するときに条件に合わないことが分かった。
権利の持ち主があいまいなシステムは、あとから改修を別の会社に頼むときや、保守の会社を替えるときに話が進みません。だれがどの権利を持っているかを一つずつ説明できる状態にしておくことが、システムを事業の資産として扱う前提です。
AI で書いたコードの権利はどう考えるか
AI が書いたコードに著作権が生まれるかは、人がどこまで創作的に関わったかで判断する、というのが文化庁の示している考え方です。
文化庁は、文化審議会の小委員会が2024年3月に取りまとめた「AIと著作権に関する考え方について」を公表しています。AI の生成物が著作物になるかは、指示の内容や、人が加えた修正などの創作的な関与の程度で個別に判断する、という整理です。
開発の現場では、AI で書いたコードと人が書いたコードが混ざることが増えています。そのため、契約では「成果物のうち AI で生成した部分も含めて、発注側が自由に利用・改変できる」ことを明記しておくと、あとで迷いません。
発注前に開発会社へ確かめる8つの質問
契約書の案を受け取る前に、次の8つを開発会社に質問すると、権利の考え方の違いを早い段階で見つけられます。
開発会社への質問リスト
- 成果物の著作権は、どちらに帰属させる前提ですか。
- 発注側に移す場合、著作権法第27条・第28条の権利も含めてもらえますか。
- 著作者人格権を行使しない、という特約に応じてもらえますか。
- 納品物に、ソースコード・設計書・環境の構築手順は含まれますか。
- 御社が以前から持っている汎用の部品は、どこに使われますか。その部分の利用条件はどうなりますか。
- 無料で公開されているプログラム(オープンソース)は、何を使いますか。外販や改修に制約はありますか。
- 下請けの会社に作業を出す場合、その会社が作った部分の権利も、御社がまとめて確保しますか。
- 将来、保守をほかの会社に替えるときに、引き継ぎに協力してもらえますか。
質問への答えが「契約書のひな形どおりです」だけで終わる場合は、そのひな形の該当する条文を見せてもらってください。答えにくそうな質問ほど、契約の前に決めておく価値があります。
質問の結果は、見積りと一緒に比べてください。見積りが安くても、権利が開発会社に残り、改修のたびに同じ会社に頼むしかないなら、使い続けるほど費用がかさみます。権利の条件は、見積りの金額と同じくらい比べる対象になります。
よくある質問
開発費を払えば、著作権は発注側のものになりますか?
なりません。著作権は作った側に生まれるため、契約で譲渡を定めない限り開発会社に残ります。
契約書に「著作権を譲渡する」と書けば十分ですか?
不十分です。著作権法27条・28条の権利を明記しないと、改変などの権利は開発会社に残ると推定されます。
著作権を譲り受けないと、何に困りますか?
別の会社への改修の依頼や機能の転用が自由にできず、同じ開発会社に頼り続けることになります。
開発会社に著作権を残す契約は不利ですか?
一概に不利ではありません。改修や他社への依頼まで認める利用許諾があれば、費用を抑えられることもあります。
AI で書いたコードにも著作権はありますか?
人がどこまで創作的に関わったかで判断する考え方を文化庁が示しています。契約で扱いを決めてください。
まとめ:権利は「改修できるか」で確かめる
システムの権利は、「あとから自由に改修し、別の会社にも頼めるか」という視点で、契約書を一つずつ確かめてください。
- 著作権は、契約で決めない限り開発会社に残る
- 発注側に移すなら、27条・28条の権利を明記する
- 権利の帰属・人格権・ソースコード・部品と再委託・保守とデータの5項目を確かめる
- AI で書いたコードも、契約で扱いを決めておく
契約書の文言に不安がある場合は、最終的には弁護士に確認してください。そのうえで、どこまでを自社の資産として持つかは、事業の計画から決めることです。CONFLUX PARTNERS では、システムの要件の整理から、権利の決め方まで、開発会社の立場を知る者として一緒に確認します。
出典
この記事を引用・紹介するとき
YW(CONFLUX PARTNERS)「システム開発を外注するときの著作権の決め方|契約で外せない5つの項目」2026年10月7日公開、https://conflux-partners.jp/journal/system-development-copyright
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